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知財裁判例紹介:
一部請求と残部の消滅時効 平成24年(ネ)10028号等知財高裁判決

知財高裁平成25年4月18日判決・平成24年(ネ)10028号等は,職務発明の対価請求控訴同附帯控訴事件に関して,原告が訴状で残部について権利行使の意思を明示(継続的に表示)していたときは残部についても消滅時効が中断する,としました。

従来より,一部請求の訴提起による時効中断の範囲については,

(i)一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えを提起した場合は,訴え提起による消滅時効中断の効力はその一部についてのみ生じ残部には及ばない(最高裁昭和34年2月20日判決)。

(ii) 一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示しないで訴えを提起した場合は,訴え提起による時効中断の効力はその全部について生じる。
とされていました。
これに対して,本件判決は,上記(i)と(ii)との中間的な類型として,

(iii) 一個の債権の数量的な一部のみを訴額とする場合でも原告が訴状において残部についても権利を行使する意思を明示(継続的に表示)していたときは,(「明示的な一部請求」の場合には当たらないから)残部の訴訟物が分断されるものではなく,また残部についても催告が継続的にされていると認めることができるから,当該残部の債権についても消滅時効の進行が中断し,当該訴訟係属中に訴えの変更により残部について請求が拡張された場合には,消滅時効が確定的に中断する。
という新しい類型を創出しました(もし上告されれば最高裁でどのような判断がされるかは分かりませんが)。
以下,本件の知財高裁判決からの引用です。

「2 消滅時効の成否について

(1)第1次控訴審判決判示のとおり,本件各発明に係る相当対価の支払請求債権は遅くとも平成10年10月7日に請求可能な状態に至ったものであり,この日が消滅時効の起算点となる。
 原告は,平成19年5月18日,本件各発明に係る相当対価の一部として150万円の支払を請求する本件訴えを提起したが,平成21年8月17日付け訴え変更申立書により請求を追加的に変更し,請求金額を2億0535万9500円に拡張した(その後,原告は,平成22年2月10日付け訴え変更の申立書(2)により請求金額を2億4281万1241円に拡張し,平成23年9月27日付け訴えの変更申立書(3)により2億4281万1239円に減縮した。)。

(2)被告は,原告の請求のうち,当初の請求額である150万円を超える部分(増額部分)の消滅時効は平成10年10月7日から進行し,上記150万円の訴訟提起によってもその時効は中断せずに進行を続け,平成20年10月6日の経過をもって時効期間が満了し,被告の消滅時効の援用により増額部分の請求債権は時効消滅したと主張する。
 しかし,数量的に可分な債権の一部につき訴えを提起したとしても,当該訴訟においてその残部について権利を行使する意思を継続的に表示していると認められる場合には,請求されている金額についてその残部の訴訟物が分断されるものではなく,また,残部について催告が継続的にされていると認めることができるから,当該残部の債権についても消滅時効の進行が中断するものと解すべきである。そして,当該訴訟係属中に訴えの変更により残部について請求を拡張した場合には,消滅時効が確定的に中断する。
 本件において,原告は,訴状において,相当対価の総額として主張した約20億6300万円から既払額を控除した残額の一部として150万円及びこれに対する遅延損害金の支払を請求するとしつつ,「本件請求については時効の問題は生じないものと考えられるが,被告からいかなる主張がなされるか不明であるので,念のため,一部請求額を『150万円』として本訴を提起したものであり,原告は追って被告の時効の主張を見て請求額を拡張する予定である」と記載していたのであるから,本件訴訟で時機をみて残部についても権利を行使する意思を明示していたと認められる。したがって,当該残部の請求債権の消滅時効の進行は,遅くとも上記訴状を第1回口頭弁論期日において陳述した平成19年6月26日に催告によって中断し,この催告は原告の特段の主張がない限り本件訴訟の係属中継続していたと認めるべきところ,その後,平成21年8月17日に原告が訴えの変更により残部について請求を拡張したことにより,当該残部の請求債権の消滅時効は確定的に中断したものというべきである。
 被告が指摘する最高裁判所昭和34年2月20日第二小法廷判決(民集13巻2号209頁)は,一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えの提起があった場合に,訴えの提起による消滅時効中断の効力は,その一部の範囲についてのみ生じ残部に及ばない旨を判示したものであって,原告が訴状において残部について権利を行使する意思を明示していた本件とは事案を異にする。被告が指摘する他の最高裁判所判決も,上記判断と抵触するものとはいえない。
 被告は,「仮に催告があったとしても,テスト訴訟において自己に有利に展開することとなったときにという停止条件付き催告であり,当該条件は時効期間満了日である平成20年10月6日までに成就しなかったから,催告としての効力は発生していない。」と主張するが,上記認定の本件訴訟における催告に停止条件が付されていたとは認められない。

(3)以上のとおりであって,被告の消滅時効の主張は,採用することができない。」

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